抄録
米国では糖尿病患者のセルフケア行動評価尺度として,食事,運動,血糖自己測定,服薬管理,フットケア,喫煙の6因子で構成されるThe Summary of Diabetes Self-Care Activities Measure (SDSCA)が広く用いられはじめている.しかし,現在わが国ではその適用がなされていないだけはなく,臨床で使用されている適切なセルフケア行動の評価尺度がない.そこで今回,日本語版SDSCA (J-SDSCA)の妥当性と信頼性の検討を試みた.はじめにSDSCAを邦訳し,糖尿病領域における6名の専門家と2名の糖尿病患者により検討を加え,内容妥当性と表面妥当性を満たしたJ-SDSCAを作成した.次に,外来糖尿病患者247名にJ-SDSCAを適用し,併存妥当性を検討し,また,信頼性として内的整合性と安定性について検討した.併存妥当性は食事に関して検討したところ,「安酸の食事自己管理尺度」と相関(r=0.74)を認めた.信頼性に関しては内的整合性の指標である各因子内の項目間の相関ならびに安定性の相関(平均r=0.23-0.86, 平均r=0.44-0.76)は,SDSCAの値と同程度の値を示した.以上の結果から,J-SDSCAの妥当性および信頼性が確認された.また,J-SDSCAは簡便に使用でき,糖尿病患者のセルフケア行動を総合的に評価するのに有用であると考えられた.